まつやま書房TOPページWeb連載TOPページ>流辺硫短編小説集③「雪下ろし」
6/8(2010.1.30更新)



 アルバイトがアルバイトを呼び、働き手には困らなかった。それに自慢じゃないが、女性の知り合いがからっきしな分、根無し草連中への顔は広かったのだ。

 ずっとずっと順調だった。じいちゃんばあちゃん達は喜んでくれ、連れて行ったアルバイト連中も、まあ中には性に合わなくて一年こっきりの者もいたが、多くは自分のやった仕事に充実し、自信を持ってくれた。任せることでコータもより力を付け、おれ自身も個性を発揮して力を出し切れていると満足していた。春夏秋には、冬に出向いている村から山の幸がよく届き、コータや常連のアルバイト連中とそれらを味わう時の旨さは格別だった。

 それが今年、危機を迎えているのだ。人が、なかなか集まらない……。

「正直、こういったイベントのようなものって、核となる人間がいなくなると今まで完璧のように見えていたものでも、案外もろいものなんですよ。社長が骨折しちゃった今年はピンチですよ」

 案内の通知を送る時に、コータが言った言葉だ。骨折したって働けないだけで、おれは行くし泊まり歩くぜとコータに反論したが、コータはさらに俯き、

「でもその働けないっていうのが問題なんですよ。やっぱりみんな、社長と一緒に仕事をやり遂げたいっていう気持ちがあるんです。だいたいこのなんでも屋だって、仕事自体はおれがやったってこなせることはこなせるでしょう。だけどこういった、沢山の連中が居着く雰囲気は社長の持っているものなんですよ。その社長に毎年のパターンと違う動きがあったんだから、ちょっと影響出ますよ」

 と、自説を静かに語った。

 そのコータの言葉通りになってしまっている。おれは村の、じいちゃんやばあちゃんの顔を思い浮かべた。みんなが困ってしまう。今さらキャンセルなどは絶対できない。

 おれは石膏で固めた左足を殴り付けたくなった。が、どうにかそれを抑え、代わりに髪をくしゃくしゃと掻きむしった。