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四.敗戦国日本女性の抱くマッカーサー像(2)

その二 「賞賛と感謝の詩」


 この、マッカーサー崇拝の最高に高まった詩は、さすがにGHQ検閲課でも出版禁止になっていたそうです。袖井林二郎が米国メリランド大学マケルデン図書館でみつけたものです。



「ああ偉大なる偉大なる 神の選びし太柱
 ダグラス・マッカーサー元帥よ 閣下はこよなき栄誉なる 天の使命の大任務 その双肩に担はれつ なおも人生最高の 永久に輝く名誉なる 戦勝国の宝冠を 天晴れ地上に戴きて 忠義に勇むアメリカの 幾十万の将兵を 旗下に率いて堂々と 敗戦国の日本に 進駐せられし勇ましさ これぞ単なる計画の 人間業にはあらずして 正しく神のみ心ぞ マ元帥をはじめとし 続く将兵各位には 礼儀正しくかつは又 軍規を守りいささかも 勝ちに驕らず高ぶらぬ いと謙譲のものごしは とりもなおさず元帥の 高き人格偲ばれて げにやゆかしき極みかも なおも勇士の行動は 神にひたむく敬虔の 態度を以っておほらかに 一致団結敏速に 能率的に順序良く 偉業はテキパキ進展し しかも無血の上陸よ これぞ世界に稀ならん ああ天恩の畏さよ ああ真実の尊さよ 人の誠の偉大さよ 唯感激のきわみなり

 吾は敗戦日本に 生を享けたる女性なり さあれ閣下を露更も 敵や仇とはおもはれず 世界的なる神霊の 平和の使徒と信ずなり なおも背後のアメリカを 統一せらるるトルーマン 大統領閣下にも マ元帥と同じこと ただしき真の信仰を 神に捧ぐる偉大なる 平和の使徒におわすれば 心からなる尊敬と 感謝となおも信頼を 厚く捧ぐるものぞかし なおもアメリカ国民の 皆様方にはるばると 海をへだてて親愛の 同じ神の子神の宮 唯愛善の一筋の わが真心を送るなり わが真心を送るなり」




 太平洋戦争に参戦し、戦中戦後日本の事情を知る私にとっても、この日本女性の詩はとても衝撃、参った、参った ! コメントの言葉は出てこない。ただただ今にして思い到ることは、数多いマッカーサーの謎のうち最大の謎、なぜ彼は母国に帰りたくなかったか。この謎解きのキーポイントがこの詩の中にあるのではないか。日本に長くいたい、日本の地に根を下ろそうと考えていたマッカーサーにとって、このような日本女性の情熱的なレターは、彼の下す根の強力な「活着剤」になっていたのではないでしょうか。




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