まつやま書房TOPページ>Web連載TOPページ>北関東から競馬がなくなる日3(曠野すぐり)・ | |||||||
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宇都宮競馬場(c) 2011.9.5 |
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(3) 都内から東武線で宇都宮方面へ向かう場合は栃木駅か新栃木駅で、本線から宇都宮方面への電車に乗り換えなければならない。俺は寝過ごさないように、新栃木止まりの準急に乗り込んでいた。それなら終点の新栃木で車掌が起こしてくれるからだ。果たして読みどおり俺は眠りこけ、新栃木で車掌に肩を揺すられて起こされた。しかしそこから先は読みと大きくはずれていた。起こしてくれた車掌、それと近くを通った運転手から、ものすごい非難の視線を浴びせられたからだ。何を非難されてるのか、すぐには分からなかった。しかし足元に目を向けて分かった。俺の周りに空き缶やら菓子パンやお菓子の袋やら、ゴミが散らばっていたからだ。 ムッとしながら黙々と片付けている車掌の横を、乗り換え時間の関係で言い訳のひとつも言わずに通り抜けて行った。なにしろ東武宇都宮線は三〇分に一本のローカル線なのだ。一本乗り過ごすと宇都宮競馬を堪能する時間を大きく減ってしまう。 予想外の出来事に眠気が吹っ飛んでしまった俺は、あのゴミが誰の仕業かすぐに思い当たった。首が痛くて何度か目が覚めたとき、高校生たちが騒がしく喋りながら飲み食いしているのを見たのだ。多分その中の誰かが降り際、眠りこけている俺の足元にゴミをてんこ盛りにしちゃえとでも言ったのだろう。俺はとんだ濡れ衣を着せられてしまった訳だ。 そう言えば一週間前にも近所のスーパーで濡れ衣を着させられたばかりだった。 その日も例によって腹の下った俺は、トイレに駆け込んだ。マイナーな駅のさびれたスーパーなので個室はひとつしかなかったが、ちょうど人が出てくるところだったので、こいつは非常にツイてると思いながら個室に入った。 紙を確認してしゃがみこんだところで、誰かがトイレに駆け込んで来る気配がした。そして気ぜわしく五回、ノックの音が鳴り響いた。 俺の方は慎ましやかに二回、ノックを返した。すると、 「まったくいつまで入ってりゃ気が済むんだよ!」 という怒鳴り声が返ってきたのだ。 その怒鳴った男はすぐにトイレから出て行ってしまった。ちがう、と俺はできることなら追いかけて男に事情を説明したかった。俺は今入ったばかりで、あんたはその前の男の時に最初のノックをしたのでしょう。人が違うんですよ、人が、と。しかし出るに出られない状況だったので、俺は釈然としないままじっと座り続けていた。なんだかここのところ、そんな出来事が続いているのだ。 |
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