まつやま書房TOPページ>Web連載TOPページ>中島茂の点描 マッカーサー>第一章 | ||||||||||||||
私がマッカーサー元帥と会ってからもう六十余年の歳月が流れています。 会ったといっても、彼がこの名もなき一介の日本人に会ってくれるわけはありません。ただ一方的に、私のほうがマッカーサー元帥見たさに、そう、あれは昭和二十四年の夏ごろだったと思う。私は有楽町の第一生命ビル、つまりGHQの前に集まった大勢のマッカーサー見物人の群れの中におりました。 午前十一時ころの出勤と遅い昼食をとるため自宅のある赤坂のアメリカ大使館に戻る午後一時ころ、GHQの玄関前に姿を現すマッカーサー元帥を見て見物の日本人たちは一様にどよめきの声をあげていました。 いろいろと毀誉褒貶の多い人物で、彼を敬愛する人と反対に彼を嫌う人の落差が非常に激しい(とくに米国において)そのような中にあって私がマッカーサー元帥に強く惹かれる最大の要因は、マッカーサーは昭和天皇をとことん敬愛して、戦後の日本統治は軍政ではなく天皇制を存続させ、象徴天皇を頂点とした日本政府を介して間接統治方式をとったことです。戦後日本の奇跡といわれた見事な復興は、多分にこの、昭和天皇とマッカーサー元帥の二人三脚、巧みなチームプレーが大きく寄与していたと思われます。 あれほど日米が憎しみあって四年近くも太平洋戦争を戦ったことを考えますと、マッカーサーの天皇に対するアプローチほど謎に満ちたものはありません。マッカーサーはどのような気持ちであれほど天皇を守り立て、敬愛したのでしょうか、とことん彼の胸中を探りたくなります。このようにして調べ続けていますと、つぎつぎと彼の心の奥深くにあった謎の部分が浮かび上がってきました。それらを私なりに次の各項に並べて記してみます。
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