まつやま書房TOPページWeb連載TOPページ>北関東から競馬がなくなる日3(曠野すぐり)・
宇都宮競馬場(e) 2011.9.25


(5)


金太郎と俺は、内ラチに寄っかかっていた。

「お前におととい連絡入れたんだぜ。宇都宮行こうって」

 俺は村本の言葉を守り、宇都宮の最後に金太郎を誘ったのだ。

「ゴメンゴメン。泊りがけで出かけてたからさぁ」

「また電車か?」

「今回はね、ずっと車だったんだ」

「お、じゃあ帰り乗っけてってくれよ」 

「いいよ。元々今日帰ったらお土産持って行こうと思ってたんだ。話があるからさ」

「えっ、何、話って?」

 俺たちは駐車場に歩き出した。

「うん。バンドやめてから働くだけで他に何もしてないってこの前言ってたじゃん。何かしたいって」

「悪ィかよ」

「いや悪くないよ。そうじゃなくてさ、実は那須に行って来たんだ。親戚のおじさんが土地くれるって言うんで、自分で登記して、見てきたんだよね。値段が付かないくらい安い土地なんだけどね、何にもないところでさ」

「でもいいじゃねぇか。どうであろうと立派な土地持ちだ」

「うん。で、この前、金なんか要らないから目標が欲しいって言ってたじゃない。それでさぁ、そこで何か一緒にお店やれないかなって思って。ほら、ライブハウスやりたいって言ってたでしょ。もっとも原野だからいろいろ問題はあるけど。どうかな、ひとつの目標にはなるでしょ」

村本の言う通りすぎちゃって腹が立つが、思えばこののんびり屋とは妙にウマが合うのだ。こいつと何か一緒にできれば、うまくいくかはともかく充実感はあると確信できる。

 それにしても、こんないいかげんな俺なんかにうまい話が降ってくるなんて、世の中おかしいんじゃないのかとつくづく思う。もっとがんばっている人がたくさんいるっていうのに。

でも話が来た以上、引き続きしっかり金を貯めるぞと、俺はいつものように調子よく胸を高鳴らせたのだった。


                        
─ 了 ─
前へ
「北関東から競馬がなくなる日 宇都宮競馬場」は今回で終了となります。


足利競馬場
高崎競馬場