まつやま書房TOPページ>Web連載TOPページ>北関東から競馬がなくなる日(曠野すぐり) | |||||||
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足利競馬場(4) 2011.1.16 |
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(3) 二〇〇三年 三月二日 今日は日曜日。毎土日に行われる中央競馬は今日も無事行われていたが、俺はテレビ観戦だけで馬券は買わなかった。そうしたら、まったくもう……。 すでにレースが終って六時間も経っているのに、思い出すとわなわな震えがくる。 今日のメインは中山記念だったのだが、出走する度に馬券を買っているローエングリンとバランスオブゲームの一、二着で決まりやがったのだ。馬単で千三十円。馬券を買いに行ってりゃ奮発して三千円は買っただろうから、三万九百円にはなった。場外までの電車賃を差っ引いて実利が、なんて計算してしまう自分が実に情けない。 ローエングリンが逃げ切って、バランスオブゲームが好位から抜け出したレース。二着と三着の間は三馬身差あったのだからひっくり返る筈もないのだが、俺は部屋の中で一人、何でもいい、誰か差せェ、差せェと大声を上げた。ゴールした瞬間は体が熱くなり、座っているのに立ち眩みがした。 テレビをすぐに消し、よし、寝ちまおう、と思った。 これはギャンブラーが持つ、独特の感覚だ。眠たくもないのに寝ようと思う。そんなことが他に趣味を持つ者にあるだろうか。 さっき起きて、弁当を買いに行って食ってシャワーを浴びた。 本当は明日の伏線として今日も長々と書こうと思ったのだが、やめた。書く気がしない。まあしかし日記は問題ない。こういうところが、日記が長く書き続けられた要因なのだから。問題は、この日曜夜の怠惰な時間だ。今日のようなことがあったり、馬券を買ってても惜しくもハズした時は本当にもうなにもしたくなくなるのだ。今までにこのムダな時間をどれくらい費やしたことか。 だがまあしょうがない。明日は足利だ、ライブ日記だ。だから寝よう、再び。 |
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※『北関東から競馬がなくなる日』は曠野すぐり氏が新風舎にて刊行した 同書名著作物を改訂したものです。 |
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