まつやま書房TOPページWeb連載TOPページ>人生ぶらぶら散策記(沖田数馬)第十六話
(2011.5.20更新)



捨てること


 職場の近くに転居することもあって家にあるものを思い切って整理することにした。吟味をして売れるものは売り、使ってもらえるものは使ってもらい、それでも駄目なら捨てることにした。不要になったテーブルはそのまま出すと回収費用がかるため、ノコギリで切断した。

 前に書いた「生き延びる作戦」の延長ともいえる。沖田家の家計簿はどんぶり勘定だったのだ。


 まず鉄道雑誌である。この鉄道雑誌は高校時代から購読しているが、高校時代の分はかなり前に数冊を残して処分した。問題なのは学生時代から現在に至るまでの膨大な雑誌だ。いや、処分しないでインデックスでもつけて保管しておけば「鉄道史」になる。しかし今の私にとってそれは不要であり、お気に入りの車両の特集などを除いて処分することにした。それでもみかん箱一つはある。


 トースターや石油ストーブも売った。以前集めていた新選組グッズも「少し」売り払った。いま困っているのがゼンリンの住宅地図である。自営業を始めたときに買ったのだが、いまとなってはもてあましている。オークションに出品していて訪問者数はいるが、なかなか落札されない。かといって高価だっただけあって、捨てるのももったいない。


 もっと面倒なのが「旅先の思い出」のような類のものだ。パンフレットからマッチまである。パンフレットは捨て、マッチは残した。これだけ旅をしたということが実感できればいい。


 もう数年も使っていないスーツやコートがある。スーツもコートも新しいのがあるが、「使えるかもしれない」と取っておいた。思い切ってこれは捨てることにした。どうせこれからも使わないのだから。


 物を持っていればいるほど悩みは増える。その典型例が車だった。オイル交換から冬タイヤの交換、真冬になればフロントガラスが凍っている。自転車にはそのような心配がない。

 フリーマーケット用に購入したパイプ椅子は活用のしようがなく、近くの喫茶店にイベント用に差し上げ、草刈用具はアパートの駐車場の手入れをしに来た業者の方に持っていってもらった。

 「この道具、もう使うこともないのでよろしかったら…」

 「まだ買ったばっかりの新品で、もったいないでしょう」

 「実は転居の予定がありまして、草刈が必要ない場所なんです」

 「悪いねえ、ありがとうね」


 捨てることの快感さよ! 差し上げて喜ばれるのはお互いに「WinWin」ではないか。

 部屋も広くなった。体と心を癒せる部屋にしたいと思う。


追伸:もし私の部屋へ来られた方へ。「殺風景」は禁句です。「シンプルですね」が褒め言葉です。 





続く
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