まつやま書房TOPページWeb連載TOPページ>人生ぶらぶら散策記(沖田数馬)第十五話
(2011.5.10更新)



介護職員に


 ホームヘルパー2級を取得して、就職活動を始めた。介護のスクールが所沢にあることもあり、その近辺を狙っていた。実習先が良かったから、学校を通じて紹介してもらい、面接にこぎつけるだろうと思った。もちろんそれだけに頼っていては危険なので、地元の施設にも応募した。

 結果、秩父の介護施設の面接が早く、2次面接まであったが即日に内定をもらった。実は「秩父脱出」を目論んでいたが、縁であろう。手続きを終え、職員デビューをした。ショートステイ(滞在型の介護)とデイサービス(日帰り)があって、デイサービス担当となった。

 朝の送迎から始まる。秩父の地理に関しては自営業で車を走らせていたこともあって自信があるのだが、市街地の細い路地になるとまったく分からない。しばらくは添乗で利用者さんをお迎えするが、果たして家を覚えられるかが心配である。

 送迎で利用者さんが到着するとお茶を飲んでいただき、入浴だ。まだ見習いなので、着脱の介助やドライヤーで髪を乾かしたりする。他の利用者さんは「脳トレ」をやってもらう。もちろん自由なのだが、塗り絵が主体だ。それを「子供っぽくて嫌だ」と仰る方もいる。そういう方には、ちょっと高度な勉強らしいテキストのプリントをお渡しする。


 11時半になると軽い体操をやる。介護の学校ではラジオ体操を講師が紹介していたが、ラジオ体操は真面目にやるとかなりハードだ。施設オリジナルの体操をやる。

 「さあ、鼻から大きく息を吸って、吐き出しましょう」

 最後は歌に併せて足踏みをして終了。その頃になると昼食だ。

 昼食の配膳がこれまた大変である。利用者さんによって食べられないものや好みがある。間違いないように配膳しないと事故につながりかねないが、もっと大変なのは調理師だと思う。

 午後になると少し落ち着いてきて、レクリエーションだ。たぶんマンネリになっていると思い、レク担当職員に「1月で思いつくものを出してもらうのはいかがでしょう?」と提案したら、大喜び。

 「今回はちょっと趣向を変えまして… “1月”で思いつくことを皆さんで挙げてください」
 と担当職員と一緒にやってみた。これが大成功で盛り上がったが、職員(私も)が漢字を間違え、利用者さんに指摘されるというハプニングも。

 利用者さんは人生の先輩。そういう場合はありがたく教えていただく。


 帰りの送迎。玄関までお送りする。

 「今日も一日ご一緒させていただいて、楽しかったです。ありがとうございました」

 利用者さんから教わることは多い。直接教えてもらうということではなく、私が介護したことに対しての反応を見て、「もうちょっとこうすればよかった」という反省だったり気づきだったりする。弟も言っていたのだが、介護職は奥が深いのを感じた。介護技術は誰でもできるようになるが、問題は「心」だ。

 ある利用者さんが「あんたは堅物だと思ったけど、面白いよ」と言ってくれたのが嬉しい。周囲にしっかり見られる仕事でもある。





続く
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