まつやま書房TOPページ>Web連載TOPページ>人生ぶらぶら散策記(沖田数馬)第八話 | ||
(2011.2.20更新) |
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うつ病との闘い うつ状態に陥ったのは十年ほど前かと思う。一日中アパートに籠もりっぱなしだった。 テレビも見ないし、新聞も読まない。興味があったことにも手が出ない。「自分の気持ちの問題だ」とそのまま放置していた。ようやく心療内科で診察を受けて「うつ病」だとはっきり分かったのは3年前だったと思う。 いったん発症するとやっかいだ。酷くなれば風呂は1週間入らない。ずっと布団で寝ている。起き上がれない。元気な健康な脳の状態であれば、布団にずっと寝ていられなくなって、テレビを見たり外出したりできるが、病気に冒された脳はの持ち主は、いくら布団に寝っころがっていても何ともない。ぐったりと横たわっているという表現がいちばん近い。 そこへ電話が鳴ったりすると最悪だ。留守電を活用して居留守を使う。少し気分が持ち直したときにこちらから電話をかける。電話は相手の都合を考えていないから、こちらも少々そのことは許されていい。 ときおり布団から抜け出して、ラクな死に方がないかネットで探す。 練炭は苦しいことが分かっている。塩化カリウムを注射すると安楽死できるらしいのだが、点滴のときに注射の針を見れずに目をつぶってしまうので「×」。 刀があるが、刃が入っていない居合の練習刀なので切腹より苦しいことは明らか。ましてや借家で自殺となると部屋の原状回復を求められ、両親が迷惑するだろう。 餓死もできまい。近くにコンビニエンスストアある。 薬を飲んでも良くならないので、タウン誌に掲載されていたマッサージにでかけた。その先生の説明では、肩と首が凝っていると脳への血流が滞り、薬効がないのだとか。 肩から頭部まで長い時間凝りをほぐしてもらった。 「ここ、痛いでしょう。ずいぶん凝ってますね。脳の体力がない状態です。これを治さないと、転職しても同じことを繰り返してしまいます」 確かに数ヶ月通って、良くなってきた気がする。死にたいとも思わなくなってきたし、朝起きられないということも少なくなってきた。 いま「秩父うつ病友の会」というのに入っている。いわゆる患者の会で、数回出席するうちに広報部長に任命されてしまった。本当に症状が重たい人は出てこれない。会合に出席できるのは、ある程度症状が軽いか、治った人である。助かったのは病気を共有できる「うつ友」ができたことだ。 うつ病のことなら沢山書ける。どうしても「まなけている」と思われがちなので、いっそのこと体験談や対処法、脳のカラクリも交えて本にしたいぐらいだ。いや、これを書いているぐらいだから、ある程度は治った証拠かもしれない。 |
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続く | ||
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