まつやま書房TOPページ>Web連載TOPページ>人生ぶらぶら散策記(沖田数馬)第五話 | ||
(2011.1.21更新) |
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電気あんかで大火傷 秩父は寒い。朝が氷点下になるのは知ってはいたが、秩父夜祭を境にぐっと冷えるような気がする。部屋の気温もひとケタ台で、朝7時に暖かい状態にしておくためには、6時にストーブを入れ始めないと駄目だ。車のフロントガラスも凍りついている。もちろん外は氷点下で、真っ白く霜が下りている。 何しろ秩父での初の冬越である。ホームセンターで半天を買って、もう一つ石油ストーブを。ついでに脱衣所用のヒーターを。更に暖かそうなスリッパと湯たんぽも買った。木造アパートなので、以前住んでいた鉄筋コンクリートのワンルームより断熱性が格段に違う。ある方の知恵をお借りして、プチプチの梱包材で北側の窓を覆った。 もともと冷え体質だ。毛布と布団だけでは足元が冷たい。なので、電気あんかを買い、それを「強」にして就寝した。 朝、足を見ればくるぶしに大きな水ぶくれができている。特に痛みはないので、「何だろう、ひょっとして低温やけどかな」と思った程度で、水疱を潰してしまった。それが大ごとになってきた。 次第に痛みが大きくなってきて、整形外科へ。骨まで達していないかレントゲン撮影までされた。骨までレントゲンを撮影するという時点で低温やけどの怖さを知った次第である。レントゲンでは何ともなかったが、水疱の表皮をはがされて、皮膚を再生させるという薬を塗られた。完全に治るまで約1ヶ月かかるとのこと。まさに重症ではないか! 例えば料理を作っていて、熱くなった鍋に触ってしまい、その瞬間に手をひっこめれば自宅にある薬を塗るぐらいで済むが、沖田数馬という人間は、「電気あんか」という発熱機器によって、じんわりと肉の底までゆっくりと焼かれていたのだった。 抗生剤の点滴をしてもらう。点滴ルームは常連の患者でいっぱいだ。そこへ「おじゃましま~す」と声をかけて空いている席に座らせてもらう。時間によるのかもしれないが、和気藹々とした雰囲気だ。落ちる滴を眺めながら「余計なことやっちまったなあ」と後悔する。 「若い人だねえ、どうしたんだい?」 「電気あんかで火傷してしまいまして… 何しろ秩父で初の冬越で」 「そりゃてえへんだ。早く治るといいねぃ ではお先に」 入れ替わりに別の患者がやってきて、秩父美人?の看護師をからかう。そのやりとりを傍から見ているのが面白く、私を含めた患者は爆笑だ。 点滴が終わったので看護師に外してもらい、「では、お先に…」と言って点滴ルームを出ようとしたら、そこに居る患者がみな「お大事に」と言ってくれた。 都会にはない、点滴ルームという「談話室」。火傷をしたおかげで、飛び交う秩父弁と秩父人の人の良さを垣間見ることができたのだった。 |
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続く | ||
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