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『郷土の英雄 武蔵武士(上・下)』成迫政則 著
2004年9月23日付・朝日新聞多摩版
◆記事文章
武蔵武士 足で描く 20年かけ足跡追う「生き様 知って」

 平安時代末期、現在の東京から埼玉にまたがる武蔵国に台頭した武蔵団の足跡を追った「武蔵武士」上下巻(まつやま書房)を、武蔵村山市の元中学校成迫政則さん(75)が自費出版した。鎌倉幕府成立に際し活躍し、地頭として全国各地で「一所懸命」に働いた一族の興亡について、20年以上にわたって丹念に調べた歩いた集大成だ。
 成迫さんは社会科教師をしていた80年ごろ、埼玉県の農家の庭先で由緒不明の「五輪の塔」を見つけた。大分県の実家にも、こけむした五輪の塔の一部があり、家族が「ごりんさん」と読んで大事にしていたのを思い出し、無名の武士たちの存在に興味をかき立てられたという。
「開発が進み、地域の館跡などの史跡が次々と消えていくのに危機感を覚え、記録にとどめなくては、と駆け回った」と語る。
 地元には資料が少なかった。休日を利用して埼玉県内をマイカーで回り、武蔵武士たちの墓や氏神の神社などを訪ね歩いた。やがて「吾妻鏡」「源平盛衰記」などの歴史書や、地名大辞典などを手がかりに、全国へ散った武士たちの足どりを追うようになった。これまでに20氏以上の分布を追い、岩手県から鹿児島県まで全国30ヵ所以上へ出かけたという。
 2年前に出した上巻では、「平家物語」で若武者・平敦盛を討ち取った話で有名な熊谷直実の一族や、今のあきる野市を拠点にした小川氏ら10氏を紹介。このほど出版した下巻では平山氏(日野市から福岡県那珂川町へ)や立河氏(立川市)のほか、比企氏(埼玉県東松山市)や河越氏(同県川越市)など、権力に翻弄された「悲劇の武将」ら13氏族の群像を追った。
 「郷土の歴史上の人物に関心がない子どもたちが多いのは残念。剛勇で情け深かった武蔵武士の生き様をもっと知ってほしい」と成迫さん。今後は資料の整理や再取材をして、掲載しきれなかった氏族の続編を書きたいと意気込んでいる。

写真見出し
「武蔵武士」上下巻を完結させた成迫政則さん。「面白くてまだやめられない」と語る

編注)地名、役職などは新聞掲載当時のものです。現在は変更されている場合もあります。
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