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■早俣古民家のあらまし
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11月8日(月)、小生在住の東松山市で古民家の解体がおこなわれるというので、ネタ探しのためにも見学に行くことにしました。
場所は早俣、東松山の東南に位置し、川島町との境となっている都幾川がすぐ東側に流れている。少し南方に行くと高麗川と都幾川との合流地点があり、一昔前は氾濫の被害が多かったとの話。しかし氾濫がおきたおかげで、山奥から豊富な栄養を持った土壌が流れ、この二つの川の落合の周辺は昔から肥沃の土地として田んぼが広がっていたそうです。訪れた古民家はそのような場所で80年以上前に建てたとのこと。
今回の解体話は、代々農業を営み続けてきた農家の家主さんが住宅新築に伴い、旧宅(古民家)を処分することにしようと考えていたそうですが、同市の市民団体が「是非古民家を自然公園の一環として活用したい」と申し出があったため、交渉の末解体費用を折半することを条件として無償で柱や梁等をお譲りしてくれるかたちとなりました。
この古民家、何回か外装を変更したため外見は一般的な住宅とそう変わりはないのですが、中を覗いてみると、太さが1メートルほどもある柱が2本、2階部分まで伸びており、その2階部分にはまたも太い梁が何本も縦横に組まれていました。木材は柱・梁ともにエノキ。80年という時間を経た木材は黒色となり、古さと頼もしさを感じさせます。
広さは二階建ての延べ163平方メートル。一階は田の字型の部屋割り、二階は蚕部屋として使われた典型的な農家の造りとなっていました。
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解体される古民家
古民家を貫き立つ大黒柱
現代住宅の柱のように垂直、真っ直ぐに加工されてなく、木の素材そのままのいびつさを活かしている。その重厚さは大黒柱として頼もしさを感じる。 |
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■解体作業
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解体作業は、古民家の解体・再生建築の経験豊富な新潟県十日町市の工務店さんに依頼、五人の作業員に遠方より来ていただきました。
まず初日はガラス戸、障子などを取り外す作業。やはり専門業者の方々、各自手際よく素早くテキパキと作業がおこなわれ、見学する人達も驚きの一声。
ガラス戸などがなくなると、昔のままの姿となり、外見からでもその歴史深さが見られました。
その後、細かいものを取り外したりして一日目の作業が終わりました。
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▲解体作業一日目の様子と徐々に古民家としての姿を現す住宅▲ |
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しばらく日にちをおいて見に行くと、作業は大分進んでいました。すでに以前の住宅の面影はなく、柱と梁だけの骨組みまでに解体はおこなわれていました。
柱や梁には、一つ一つに『い十五』といったような目印が貼られていました。設計の際や、再び組み立てる際に活用するようです。
見学していて、ふとあの太い柱や梁はどうやって取り外すのだろうと疑問に思っていたのですが、見学してその疑問は解決しました。それらの作業はクレーン(でしたっけ?)を使って持ち上げながら木材を木槌で叩き、はめ込みをはずし、そのままクレーンで置き場まで運んでいました。
しかしクレーンなどの機械がない大正期はどうやってこのような作業を進めていたのでしょうか。人力だとは思いますが、大変な力仕事だったことでしょう。
一本一本、取り外した木材をクレーンで木材置き場に置き、補助の人がそれを整理していく作業は見ていてとてもワクワクしました。幼い頃、電車を見たり、車の様子を見た時のような心地とでもいうのでしょうか。この一連の作業は数時間見ても飽きないものでした。
最後に、住宅の大黒柱を作業員全員の補助とクレーンを使っての作業で土台から引き抜き、すべての作業は終了しました。一週間もの期間、泊まり込みで来られた作業員の方々、ご苦労様でした。
解体された古民家の柱や梁の木材などは、一時的に倉庫に保管されるそうです。
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少し見づらいですが骨組のみの様子
木材置き場。大小様々な柱や梁が40本近く置かれた。
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つい最近のことですが、営業まわりで川越市のある書店さんによったところ、古民家に関する書籍が数点、目立つところにおかれていました。
とくに雑誌「一個人」(KKベストセラーズ発行)では、誌面の半分以上を特集「古民家の隠れ宿、古民家の食事処」として紹介しています。この特集ではまだ都会の人々向けの観光案内としての特色が強い感じもしますが、メジャーな雑誌でここまでプッシュされて紹介されたということから、やはり日本の古来の文化を伝える一つの大事なものとして古民家は注目されてきたと言えるでしょう。
今回、古民家の解体を見学できたことは、ほんとうに幸運なことでした。
このような年季の入った住宅を解体する技術を目の当たりにできることはめったに出来ない体験だったといえるでしょう。
そういった技術も残すことも古民家保存の意義ではないかと、今回の見学記を書きつつ思えたことです。
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