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 大川周明著
 『米英東亜侵略史』
(第一書房)




 この本を本紹介の初めての本としたのは、この本が発刊後60年(60年しか経っていない)を経て、この本はいまだ死んでいないと感じるからである。
 ある人から見れば、唾棄すべき本であるし、ある人は、真意はこのとおりで、日本は負けたとは言え、立派な戦争をしたのだと言うだろう。
 しかし、侵略は事実だし、当の侵略された中国、韓国、朝鮮民主主義人民共和国などの国々、国民が怒っているのだから、もう少し言いようがあると思うが。


 さて、本著であるが、開戦間もなくの昭和17年1月23日印刷、同28日第1刷2万部発行と、奥付に記してある。
 この本がどのくらい売れたか、たまたま初版本のため、分からないが、かなり売れたことは容易に考えられる。この本を購入したのは25年以上前である。上製本のしゃれたデザイン(装丁)のこの本は、開戦間もなくのラジオ放送で、12回(12月14日より25日まで)放送されたものをまとめたものである。戦争初期の日本軍が圧倒的な勝利をおさめていたときであるため、視聴者がどのように聞いていたかも想像できる。
 原稿は当然、開戦前後に書かれたものであろうし、長年の考えをまとめたものであろう。その内容は、いかに長期に、悪辣に中国やインドやアジア諸国、いや世界を侵略してきたかを語っている。
 また、このような内容で、この本のまとめとしている。「日本が支那(当時、日本は中国に対しこのように呼んでいた)の領土保全を不動の国是として来たのは、その奥深き根柢を、日本人の真心に有しております。支那の文明は黄河と揚子江の流域に起り、その文明は我が日本の生命と生活とのうちに、今なお溌剌として生きておるのであります。」「かつては東亜の国々をあれほど豊かにした支那文化は、巧みに支那の統一を破る術を心得ている欧羅巴帝国主義的諸国、就中イギリスの侵入と共に、内的にも外的にも弱められて、ついに偉大なる過去の、単なる影と成り下らんとしております」(一部現代漢字かな使いに変えています)

 侵略戦争であっても、かなりの正当性がある。現在のイラク戦争もそうであろう。しかし、イラク戦争賛成・戦争反対であれ、その論拠を聞いていると、その幅が狭いことに気がつく。いつの間にか日本人はこれほど視野が狭くなったのか、愕然とする。
 少ない選択肢しか選べない時は、不幸である。あきらめ的に言えば、時代が悪かったのである。しかし、もし多くの意見が聞けることが可能であるなら、そして今なら可能である。この本はそんなことをささやいてくれる。


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