市原市から大多喜町までの三九・一キロを結ぶ「小湊鉄道」。緑豊かな車窓の風景や昔ながらの木造の駅舎など、郷愁を誘うローカル線だ。
その魅力のとりこになり、十年ほど前から写真を撮り続けてきた。昨年十二月には念願だった写真集「房総のローカル線 小湊鐵道」(まつやま書房)を自費出版した。
掲載写真は、約三千枚の中からえりすぐった約百八十点。サクラや紅葉など四季折々の風景の中で列車の姿をとらえ、力強さや物悲しさ、素朴さなど、さまざまな表情を感じさせる。登下校の高校生や線路を補修する社員ら鉄道とともに生きる人々の姿も写した。
「鉄道は人があってのもの。ありきたりの春夏秋冬ではなく、普段着の姿を表現したかった」と満足そうにほほ笑む。
写真を始めたのは二十歳ごろ。根っからの鉄道ファンで「人間くさいところが良い」とほれ込むSLを撮るためだった。カメラを手に全国を旅した。しかし、一九七六年にSLが現役を引退、撮りたい被写体がなくなり写真から遠ざかった。
再び情熱がよみがえったのは九四年ごろ。「JRの駅で開催された写真クラブの作品展を目にして、ちゃんと勉強してみようと思い立った」
写真を再開後、しばらくして小湊鉄道の存在を知り、沿線に足を運んだ。一目見て「日本の原風景を感じさせる景色の中、かわいいディーゼル車が走っている。存在感がある」とのめり込んだ。
撮影場所によっては列車は一時間に一本ほどしか通らない。植物の成長具合や気象条件なども重なり、シャッターチャンスは、それほど多くない。毎週のように通いつめ、撮り続けてきた。
写真集はこれまでの集大成だ。「千葉にこんなにも素晴らしい鉄道がある。多くの人に知ってもらえれば」と期待する。
写真集はA4変型判で百二十八ページ。小湊鉄道の有人駅か鉄道部、鈴木さんのホームページ=http://www.kitekinet.com=で購入できる。一冊二千百円。一部作品はホームページ上でも公開。 (宮崎仁美)
写真見出し
1947年、千葉市生まれ。67年ごろからSLの撮影で日本中を旅する。20年近く写真から遠ざかるが、94年ごろに再開した。2008年12月、撮り続けてきた小湊鉄道の写真をまとめて写真集を出版。市川市在住。
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